九州→関東

フェリー2日目。洋上で一日を過ごす事は初めての経験だ。
海から昇る朝日見たさに5時ぐらいに起床。30日の予行も兼ねてはいるのだが。
いそいそと支度を整え甲板に出てみると、昨日はあんなに赤かった月が抜け殻のようになってぼんやりと浮かんでいた。


早朝の海風は冷たい。
空は白んでくるものの、なかなか顔を出さない朝日を待ちつつ冷たいミロをすする。
なぜかこの船には暖かい缶飲料が売っていないのでしょうがなくこんなものを飲んでいるのだ。
そうまでして待ち続けた朝日はやはり美しく、月とは一味違った力強さをもって輝いていた。



朝日にすっかり満足して船室に戻るとすぐに眠気に屈服してしまい、
気が付いた時には徳島へ接岸してしまっていた。
なんというか徳島港はのどかな風景であり、端的に言うとつまらなかったが、
昼間の出航というものもまた経験したことが無かったので我慢して徳島港を見続けた。
やがて船は轟音と共に回頭をはじめた。
出航する巨大な船はなんとロマンに満ちていることか!


徳島港を出航した後、荒俣先生のヨーロッパホラー紀行ガイドを読みつつうたた寝しつつ時間をやり過ごす。
気がつくと時刻は6時を回っており、大分空も赤く染まってきた。
夕日は船尾側に沈んでいくので、暖かい上に風の来ない煙突の下に昨日と同じく陣取ってひたすら待った。
遮るものの無い洋上では日没が7割増で綺麗に見える気がする。
気がつくと同好の士が後部甲板にちらほらと集まり、思い思いの場所で沈み行く夕日を見送っている。
大半の人は寒さに耐えれず客室に戻っていく。
ワハハ、防寒を考えることが日没観察の第一歩なのだよ等と思いつつ一人悦に浸っていると、
やおら風が強くなり、波を巻き上げ海水が雨のように降り出してきたので
あえなく退散して速やかに寝てしまった。